疫病神 黒川博行|あらすじ&感想 疫病神シリーズ第1作

黒川博行「疫病神」を興味深く読み終えました。黒川博行氏の「疫病神」シリーズの第一作として世に出た本作は大阪を舞台にしたヤクザ系ハードボイルドもので、私達にとって身近な産業廃棄物処理を題材にしています。主人公の無鉄砲な行動をどきどきしながら読み進めつつ、現実のゴミ問題を私たちの身近なこととしてあらためて認識させてくれました。

「疫病神」から始まる疫病神シリーズは7作からなり、どの作品も読者の身近な問題を絡める社会派小説として読みごたえのあるシリーズと思います。ビデオで見るもよし、文庫本を読むもよし、楽しめる作品だと思うので一読されることをお薦めしたいです。

「疫病神」あらすじ

産廃最終処分場建設計画

大阪ミナミに事務所を構える二宮啓之は建設コンサルタントとして生計を立てています。建設コンサルタントとは本来建築工事や解体工事の仲介斡旋ながら、二宮は収入の多くを「サバキ」の収入で暮らしています。ビルや自治体開発の建設案件には入札妨害や騒音などで難癖をつけて金銭を強要する暴力団やその関連企業がまとわりつきます。サバキとはそのまとわりつく暴力団(=ヤクザ)をヤクザを使って抑える「前捌き」のことで、二宮は建設会社からサバキの依頼を受けると適当な組筋を斡旋し、その仲介料で事務所を経営しています。しかし平成23年春に施行された大阪府暴力団排除条例は二宮の収入源を直撃し、稼ぎは激減しているのです。

 取引先から新しい仕事の情報を得た二宮は、小畠総業の社長小畠一三に会います。小畠総業は大阪富田林市を地盤にもつ産業廃棄物処理業者で産廃中間処理(建設現場からでる木造家屋解体材焼却、コンクリート片破砕や廃タイヤのチップ処理)を得意としてすでに長年の実績を積んだ業者です。小畠は新しい案件として富南市の天瀬にある9千坪の谷で安定型最終処分場(有害物質が流出しない建設廃材や金属屑の捨場)の設置を計画し、地権者や関係者との折衝や調査などを精力的に進めてきました。しかし最終段階の許可申請書類の作成を依頼する時点で水利組合から補償金の値上げを通告されて水利組合長の印鑑をもらえないので申請ができないで困っていることを二宮に説明します。小畠は二宮に「印鑑をもらってほしい」と相談を持ち掛け、二宮はこの仕事を引き受けるのです。

「疫病神」桑原保彦とのくされ縁

小畠総業で廃タイヤが燃やされたことをきっかけに何か裏があると感じた二宮は単独で調査を始めますが、社長の小畠にこの案件を紹介した倉石に会おうとして二宮がヤクザに殴られます。天瀬の最終処分場には関わるな、という警告であることは明らかながら二宮は真相を追うことを続けます。

 同じころ古川橋の解体屋が二宮のサバキを断りたいという申し出があり、元請けの舟越建設にサバキ継続交渉に乗り込みますが二宮は解決することができませんでした。このサバキを担当している暴力団二蝶会の桑原保彦はこれからはじまる小畠総業のもめ事とあわせてこの争いも決着させることになるのです。

 小畠総業の案件調査を単独で動こうとして陵南会のヤクザに殺られそうになるところを桑原に助けてもらった二宮は事の詳細を桑原に話します。桑原は小畠総業が二宮に頼った産廃事業の認可案件がお金になると直感し、二宮をリードしながら二人で解決に向けて本格的に動き出します。疫病神コンビ桑原と二宮はシノギ(収入)を得るために事件の核心に迫っていきます。

疫病神コンビに怖いものなし

 二人はは巧みな話術と桑原のステゴロ(素手の喧嘩)を駆使しながら関係者と会い、口を割らせていきます。事件をひも解いていく中で二人は天瀬処理場の建設に裏で糸を引く誰かがいることを確信します。水利組合長の橋本と会って同意書に捺印させた二人は小畠に会いに行くのですが、そこに居たのは小畠ではなく小畠から金を巻き上げようとしている暴力団白燿会の幹部でした。

 真相の究明とシノギ獲得に動き回る桑原・二宮コンビの行く手にはこれでもか、というぐらい繰り返し邪魔が現れます。桑原は持ち前の喧嘩強さと直感で修羅場をかいくぐります。一緒にいる堅気の二宮は何度も危ない目に遭いながらなんとか生き延び、天瀬の最終処分場に舟越建設が絡んでいることを突き止めるのです。

極道は金や

執拗なヤクザの妨害が入り、何度か死にそうになりながらも二宮は小畠に会い、小畠総業にちょっかいをだして天瀬処理場の建設を肩代わりしようとしているのが大手ゼネコンの舟越建設であることに確証を得ます。二宮は舟越建設の子会社FKエステートの坂本を問い詰めます。そして舟越建設が計画しているのは天瀬処理場の数倍規模の処理場、動くカネは数億円になることを知ります。その一方でヤクザ白燿会の妨害はとまりません、桑原は二宮が持っている天瀬処理場の申請書類のカタとして囚われの身になってしまいます。

 白燿会に囚われている桑原を助け出そうと決心した二宮は、むちゃな手段で桑原の居場所に入り込み助け出すことに成功します。事情を知り尽くした疫病神コンビは、決着をつけてシノギを得るために舟越建設本社に乗り込んでいくのです。。

疫病神 感想<Novelsman Comment> 

 「疫病神」を読みながら、桑原保彦と俳優の竹内力がをダブらせてイメージしてしまう私がいます。だいぶ前に関西で大ヒットした「ミナミの帝王」に出演している竹内力の人情味あふれるのに強面で血気に満ちた演技の残像が今も残っているようです。実際にはビデオ「疫病神シリーズ」がリリースされていて、北村一輝が桑原を迫力ある演技で演じ浜田岳が二宮を原作通りの感性で演じていて十分楽しめると思います。。

 ではまた次の作品でお会い致しましょう。。

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