「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(アンディ・ウィアー著 早川書房)を読了しました。宇宙を舞台に進行するSF小説です。専門用語がたくさん出てきますがつまずくことはありませんでした。壮大なスケールに想像をふくらませながら上下巻を一気に読み切ってしまいました。難解さを感じない著者の筆力に圧倒されると同時に、わかりやすい翻訳に脱帽です。
ヘイル・メアリーはマリア様?
この二冊は私が本屋さんに居た時、邦題「プロジェクト・ヘイル・メアリー」に目が留まって買った小説です。事前に人に勧められたことはなく、書名を聞いたこともありませんでした。著者アンディ・ウィアーが2015年公開の有名なSF映画「オデッセイ」の原作「火星の人」の著者であることも後から知りました。ただ「ヘイル・メアリー」がアヴェ・マリア(聖母マリア)を意味することは知っていました。私はキリスト教徒ではありませんが、書名から宗教的な背景を感じていました。ダン・ブラウンが著した小説「ダヴィンチ・コート」のような展開かもしれない、とぼんやり思っていました。
ここで「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(下巻)に掲載されている山岸真氏の解説文の一部を引用します。
『できれば本書は、内容についてなんの事前情報もなしに読んでいただくのがいちばんいい』
物語は私の想像度合をはるかに超える展開の連続です。次にどんな場面と出会うのか予想がつかず、進展を知りたくてついつい小説に没頭してしまう。そんな豊かな時間を楽しむことができるのは、事前情報を持っていない読者の特権ではないでしょうか。時を忘れて読み耽るのは面白い小説であればと同じと思います。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はその特権を堪能できる小説です。僭越ながら私もこのブログに訪れていただいた方にブックレビューに目を通す前に読むことをお薦めしたいと思います。
ヘイル・メアリーはSF小説?
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はSF小説です。しかし、私は小説の主人公と人間ではないパートナーとの固い『絆』に強く惹かれました。物語の中盤からは、まるで未熟な若者が成長していく姿を描いた青春小説を読んでいる気分になっていました。自分自身が勝手に擬人化して読み進めているのでしょう。ただ『キズナ』の展開を知りたくて読むことを止められなかったことも確かです。
この小説は2026年に映画化されることが決定しているようです。もしかしたら映画化されることを前提にした作品かもしれません。映画は大ヒットするでしょうし、私も間違いなく映画館に足を運ぶと思います。その前にこの原作を読むことができたことは運に恵まれていたように思います。映画を観る前に目を通しておいて絶対に損することのない小説であることを確信しています。
ヘイル・メアリーは神頼み?
題名の一部になっている「ヘイル・メアリー」を調べてみました。
『アメリカンフットボールの試合終盤に、負けているチームがタッチダウンによる逆転を狙うために行う一か八かの神頼み的ロングパスのこと』
著者は小説の結末にこの意味を込めたんだろうというのが順当な考えのようです。アヴェ・マリアを背景にした内容などと予想した私は全く見当ハズレでした。ただヘイル・メアリーという言葉を知っていたので私はこの本と出会い感動することができました。マリア様、ありがとうございました。
雄大な宇宙と壮大な結末、物語への引き込まれ方は尋常ではない小説です。そして読みおえるとわかっていただけると思います。私のいう『キズナ』の意味を。
最後までよんでいただきありがとうございました。
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