図書館の現代文学の棚に『時代屋の女房』が並んでいました。
何気なくよんでいると同名映画の夏目雅子の映像が強烈に浮かんできたのでちゃんと読むことにしました。 読んだあと映画のビデオも観てしまいました。夏目雅子の美貌にみとれながら、今はだいぶ変わった東京大井町や日本各地の様子も楽しむことができました。
小説『時代屋の女房』は村松友視の直木賞受賞作品で、1983年に映画化されていますので題名を聞いたことがある方もおられると思います。この小説は実在した骨董品店を舞台に繰り広げられる下町人情あふれた恋物語です。主人公安さんと恋人真弓の切ない関係がにじみ出て、読んだ後爽やかな気分にさせてくれる小説です。
真弓は不思議な魅力を持った美しい女性であると私は想像しました。小説を読む方が思い浮かべる真弓が女優さんであれ漫画のヒロインであれ心地よく頭から離れないのは私だけではないと思います。私の場合頭から離れない真弓はもちろん夏目雅子。時間が許せば小説と映画両方目を通されることをおすすめします。
目次
時代屋の女房 あらすじ
安さんは東京大井にある時代屋という骨董品屋の店主。 ある日安さんの店に銀色の日傘をさしてピンク色のTシャツを着た女性が店に入ってきます。
女性が店の2階を物色している時安さんと関係をもち、この女性、真弓はこの日から安さんの店に居つくことになります。その真弓がどんな過去をもっているのか、何も知らないまま安さんは真弓と一緒に暮らします。
時代屋は国電大井町駅(現京浜東北線大井町駅)近くにあります。安さんは大井の商店街で喫茶店のマスターとその従業員ユキちゃん、クリーニング屋の主人今井さんや街の人々と暖かい人情にあふれた毎日を過ごしています。
そんな中真弓が4回目の家出をしてしまいました。真弓は時々突然姿を消し、いつも7日目に戻ってきます。
安さんが居酒屋トン吉にいる時、喫茶店のマスターが安さんに、「何しろ時代屋は女房でもってるんだから」と呟きます。居酒屋にはクリーニング屋の今井さんもいて真弓の話題で花がさいています。マスターも今井さんも親身になって「蒸発」してしまった真弓のことを心配してくれているようですが、安さんは今度は真弓がもう戻ってこない気がして不安になっていろいろ考えをめぐらせています。
姿を消して7日目、真弓は戻ってくるのでしょうか。。
時代屋の女房 Novelsman Comment
『時代屋の女房』の舞台は下町情緒にあふれています
小説『時代屋の女房』を分類すると、恋愛小説となるようです。 私は『時代屋の女房』を人情小説ジャンルに分けたいと思います。分類などどうでもいいことながら私は思いました。『時代屋の女房』で舞台になった下町の建物が近代的になることは誇らしいことです。いっぽう今の世の中は「プライバシー保護」のもと信じることよりも疑うことが大切であるような風潮が幅をきかせている気がします。『時代屋の女房』から感じることができる、人と人とが温かくつながりながら相手のことを気遣う会話が日本のありきたりの情景であり続けることを望んでやみません。
時代屋の女房|映画 夏目雅子 真弓役
映画『時代屋の女房』は1983年に松竹が制作した映画です。安さんを演じるのは渡瀬恒彦、石原軍団渡哲也の弟として有名です。そして真弓役が夏目雅子です。西遊記の三蔵法師役や大作映画に出演されていた人気女優さんでした。透明感のある顔立ちが印象的で映画でもテレビでも画面の夏目雅子を追いかけていたことをはっきりと思い出します。
映画『時代屋の女房』でもその美貌が満載で、沖田浩之演じる若者と顔を合わせる場面では思わず映像を止めて見入ってしまいました。
時代屋の女房|映画 名古屋章 旅館の主人
映画『時代屋の女房』では安さんが真弓を探して盛岡に旅に出る場面があります。そこの旅館の主人役を演じているのが名古屋章です。トイストーリーのポテトヘッドの吹き替え声優であることで有名になった俳優・声優さんですが、映画のなかでとても味のある演技が光っていました。映画をご覧になる機会があれば注目してほしいと思います。
夏目雅子さん、渡瀬恒彦さん、渡哲也さん、名古屋章さん、沖田浩之さん、どの俳優さんもすでにこの世の人ではありません。自身の年齢を感じつつ、ご冥福をお祈り申し上げます。
時代屋の女房|映画の併映作品 ― 蒲田行進曲
最後に映画『時代屋の女房』と二本だてで上映されていたのが『蒲田行進曲』です。現在もJR蒲田駅の発車メロディーに使われている主題歌も有名ながら、『蒲田行進曲』はつかこうへい氏の代表的な小説です。改めて紹介しようと思います
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