黒川博行氏の「破門」を読みました。2014年発表の「破門」は第151回直木賞受賞作、小説が発表されて間もなくビデオ化されて話題になりました。疫病神コンビ、イケイケヤクザの桑原とヤクザ慣れしている堅気の建設コンサルタント二宮が映画プロデューサー失踪をきっかけに派手に動き回るハードボイルド小説です。マカオ、香港、日本各地でカネを奪い合うストーリーはスピード感を保ったまま展開します。カネとヤクザの小説なのに重たさや暗さを全く感じさせない黒川博行ワールドを小説「破門」で体験してみてはいかがでしょうか。
あらすじとNovelsmanの感想を記します。「破門」を読まれた方の感想もお聞きしたいですね。
目次
「破門」あらすじ
疫病神現わる
小説は暴力団二蝶会若頭補佐桑原保彦と堅気の建設コンサルタント二宮啓之が映画製作プロダクションを訪問することから始まります。二宮啓之は今月全く仕事がない状況です。二宮は収入を得るために桑原の誘いを受け映画製作プロダクション社長小清水隆夫を訪問します。
桑原と二宮が会う小清水は、関西の映画製作会社に名が売れている映画プロデューサーです。小清水はすでに二蝶会若頭嶋田に映画製作の出資を打診して嶋田が出資することを確認しています。小清水は映画『フリーズムーン』の総製作費3億円、数社の出資者を募って製作委員会を設立すると説明します。 桑原、「『フリーズムーン』は当たりますか」小清水、「たぶん、当たります」
マカオのカジノに隠しカネ
少し経って桑原は二宮に小清水が金を持って失踪したことを知らせます。二宮は若頭嶋田が1350万円、桑原が150万円を出金済であることと合わせて、嶋田が100万円を二宮の名義で出金したことを知ります。ここから疫病神コンビは持ち逃げされたカネの回収のために動き回ることになるのです。
桑原は二宮と小清水の家に行った時に二人を待ち構えていたヤクザ二人をボコボコにしてしまいます。二宮がその二人が二蝶会の本家神戸川坂会の直系亥誠組の組員であることをしったのは、嶋田からの電話でした。嶋田から、亥誠組副本部長滝沢吾郎が自身の組員2人に傷を負わせた桑原の幕引きを要求していることを聞きます。亥誠組は二蝶会と同じ本家神戸川坂会直系で規模の大きい組でした。疫病神コンビは自分達の身が危ない状況にあることを承知で小清水の追い込みをつづけます
桑原と二宮が小清水の居場所に行くと亥誠組のヤクザ達が匕首(あいくち)を持って二人を待っていました。殴り合いになって桑原は肺に穴があく重症を負い入院、二宮は命からがら逃げのびます。ひとりで小清水の居場所を探し続ける二宮は小清水と愛人の玲美がマカオに飛んだことを突き止め、二宮は桑原とマカオに飛びカジノを転々として居場所を探します。
疫病神コンビは小清水と玲美を香港のホテルに追い込んで吐かせます。小清水を操っているのが滝沢であることを知った桑原と二宮は小清水がマカオに隠したカネを回収し、日本でのカネの回収の算段をして大阪に戻ったのでした。
「桑原さんとおれは一蓮托生ですわ」
小清水が帰国して銀行に盗難届をだしたので、桑原と二宮は日本で小清水がもつカネの回収が不可能になってしまいました。二人は小清水の悪だくみを利用して大金を手にしている悪党から居場所を荒っぽい方法で聞きだして小清水を確保します。一方で二蝶会若頭嶋田は亥誠会副本部長の滝沢に会います。嶋田は二蝶組組長森山毅が桑原を破門にしようとしていることに賛成できませんが、組のトップの意向に逆らうことはできず一週間後に桑原の処分を亥誠会に伝えることに同意します。
二宮と桑原の舎弟徳永節夫が小清水を釜ヶ崎の隠れ家から逃がしてしまったことを知った桑原は、肚をくくって亥誠組本部長の布施洋祐に直談判に向かいます。布施は亥誠組若頭補佐諸井の子分、滝沢は諸井の舎弟で布施のほうが滝沢より発言力が高いことを見越しての行動です。桑原は二蝶組組長森山から自分が絶縁か破門になると言い渡されている桑原は、二宮と二人でありとあらゆる手段を駆使して今治市の鈍川温泉に逃げていた小清水を捕えて大阪に戻ります。
ここから桑原と二宮対滝沢組の本気中の本気の争いの始まりです。命がいくつあっても足りないくらい暴れまわって疫病神コンビはカネを回収していきます。結果を残し桑原は二蝶会若頭嶋田と会います。桑原自身も肺に穴をあける傷を負っていますが、同じ系列内の組員をズタボロにした桑原の処遇はどうなるのでしょうか。そして二宮はシノギのカネを手にすることができるでしょうか。
「破門」感想<Novelsman Comment>
感想1 潔い生き方に憧れます
極道であることを誇りにして、自分の信ずる道を生きる桑原。怖い怖いといいながら、ボコボコにされて何が起こっても冷静に判断しようとする肝のすわった二宮。自分の信ずる道をいく桑原も肝のすわった二宮も私にはあこがれるところです。ことあるごとに常識はどうの他人がこうのと理屈で流される人生ではなく二人のような潔い生き方になるよう、日々切磋琢磨の自分です。
黒川博行氏は「破門」を通してドキドキできる楽しさを与えてくれると同時に、流されて生きている私のような人間にちょっとしたヒントを示そうとしてくれているのかもしれません。
感想2 Macau Venetian Hotel
文中にでてくるマカオ・ベネチアンホテル。このホテルは実在し、カジノがとにかく広いです!ヨーロッパのどこかの街のイメージで造られた水の都の施設もよいですが、圧巻はやはりカジノです。広い場所にルーレットやバカラや大小の台が数十台、その一台一台に人が群れているさまは驚きでした。私が訪れたのはもう10年以上前ですが、あの景色というかスケールの大きさは今もはっきりと覚えています。香港マカオに行く機会があれば立ち寄られてはいかがですか。。
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