アノニマス・コール 薬丸岳|一気読み確定です

 図書館で題名に惹かれて読みました。薬丸岳の作品はこれが2作目です。最初に読んだ「蒼色の大地」という作品が素晴らしく印象に残ったので他の作品も触れてみたいと思っていました。

『アノニマス・コール』は警察を舞台にしたミステリー小説です。警察を辞めた孤独な男がかけがえのない人のために命をかけて犯人を追い詰める。私は「匿名電話」の正体を知ろうと一気読みしてしまいました。

『アノニマス・コール』の要点を記します。涙腺のゆるむちょっと感動的な最終章です。。

『アノニマス・コール』 要点 

 無言電話

 警察官だった朝倉信志は工場勤めをしながら静かに暮らしています。ある日酔って家に帰ると無言電話がありました。気になった朝倉は元妻の安本奈緒美に連絡して番号を確かめました。無言電話は朝倉の番号を知らないはずの娘、梓の電話から発信されていました。  

  朝倉と同じく結婚前警察官だった奈緒美は3年前に朝倉と別れて娘と暮らしています。帰宅していない娘の梓を心配していた矢先「お嬢様を誘拐しました。戻して欲しければ一千万円を準備しなさい」との電話です。

 朝倉は梓からの電話が犯人からのメッセージと悟り、奈緒美と一緒に誘拐された梓を見つけ出すための追跡が始まります。

誘拐犯追跡

 朝倉は過去の経験から警察を信用していません。奈緒美に梓が誘拐されたことを警察に連絡しないよう指示します。しかし自分一人で犯人を捕まえて梓を取り戻すことはできないことを自覚しています。そこで朝倉は二人の男の力を借りることにします。尾行や誘拐犯の糸口をつかむことを期待できる岸谷勇治と、チンピラに絡まれているのを助けた朝倉が勤める工場の従業員戸田順平でした。3人は犯人の正体を知ろうと行動を開始します。

 奈緒美は誘拐犯の指示が金銭ではないとを感じています。しかし梓は誘拐されたままです。

見えない力

 朝倉たち3人は犯人の正体を明らかにできないまま犯人の言いなりです。一方奈緒美は状況を父に話し、父が警察に通報しました。これによって神奈川県警が解決に動き出します。犯人から警察が動き出したことを指摘され朝倉は梓の命と引換えに新しい取引、ある情報の提供を強要されます。

 朝倉は犯人の要求に応じるため情報の裏付けを急いでいます。裏付けを取ろうと動けば動くほど、朝倉は警察の中に公にされていない事実を隠し通そうとする圧力ががはっきり見えてきます。

 朝倉、岸谷、戸田は誘拐犯の後ろ姿が見えてきました。その頃奈緒美は夫の離婚前の行動が犯人の必要としている情報に関わっていると確信しています。しかし警察は逆に朝倉を容疑者として捕まえようしています。

 朝倉は犯人との取引の現場に向かっています。奈緒美は梓を引き取ろうと犯人の指示通りに移動しています。物語は東京の喧騒の中でクライマックスを迎えます。梓は無事奈緒美の元に戻るのでしょうか。朝倉は。。

『アノニマス・コール』 Novelsman Comment <感想>

 冴えない一人暮らしの中年男が大切な人のために組織を敵に回して壁を乗り越えていきます。読者を巻き込むように主人公が核心に迫っていく緊迫感に時間を忘れて読んでいました。

 あわせて、朝倉や仲間たちが自身の信念に正直であるが故に困難にぶつかっていく強さと、警察という大樹に頼って生きている人達の不安定な心の対比をしっかりと描いていると感じました。作者の文章力に感服しつつ、私もせめて身の丈にあわせて正直に生きていこう、と思わせたのでした。

 そして、手に汗にぎるクライマックスの後に心温まるエンディングシーンが待っています。愛情、家族の絆、被害者の悲哀、熱意の塊のような仲間達。全てが詰まった結末です。。お楽しみください。

 薬丸岳氏の作品は次も次もと読みたくなる不思議な引力を感じました。次も薬丸岳作品にしようと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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