読者は、今、何をみているのだろうか。本を見ている、このページに書かれた文字をみている ー どれも正しいが、正しくない。正確には、光をみているのだ。
唐突に引用しました、インパクトのある文章と思いませんか?この本の表紙には、「文系でもよくわかるー世界の仕組みを物理学で知る」とあります。表題のとおり世の中のさまざまな事象を物理学の視点で私のような文系人間でもわかるよう解き明かしていきます。私がなるほど、と思った内容を要点にして綴ります。私たちに物の見方を教えてくれる一冊と考えて紹介します。本書を読むきっかけになれば嬉しいです。
目次
『世界の仕組みを物理学で知る』 要点
物理学1:本当に、物理学で株価は予測できるのか
株価の動きは一般的に予測不能です。2008年のリーマンショックの際、名だたるヘッジファンドも大きなダメージをうけました。そんな状況でも80%のリターン(100万円投資して180万円になる)を実現したファンドがありました。
運用の詳細は当然企業秘密ですが、筆者はこのファンドが「クオンツ運用」を用いて驚異的なパフォーマンスを実現したと述べています。さらに株価を「エントロピー」という物理学用語に置き換えて株価を統計力学の観点で論じています。
物理学2:メールはどうして届くのか
2021年の日本国内携帯電話の契約数は2億47万件(引用元:worldbank.org)また携帯に占めるスマートフォンの普及率は94%(引用元:IT Media)です。つまり、この国には人の数よりスマホや携帯電話の数の方が多いのです。そんなたくさんの機器があるのにどうして自分宛の電話やメールが間違わずに自分のところに届くのでしょうか。
筆者はこれを光と波で説明します。家の中にいようと、いろいろな物に囲まれていようと、電波がやってくることを素人の私でもわかるように説明しています。
物理学3:どうして雲は落ちないの
雲はどうして浮かんでいるのでしょうか。重さがあれば重力の法則にそって落ちても不思議ではありません。本書では雲も落ちるには落ちていくもののゆっくりしたスピードで落ちるから浮いているように見える、と説きます。霧吹きの粒子をたとえにしてぼんやりと理解していることをはっきりとさせてくれます。
物理学4:赤色はなぜ赤色に見えるの
記事の冒頭の引用「正確には、光をみているのだ。」はこの章の記述です。赤色が赤色に見えるのは、その物自体が赤い色の光を発しているわけではありません。色のしくみを可視光線の説明とあわせて説明しています。虹がどうして虹なのか、その仕組みを理解できた気分になります。
物理学5:意識はどこからうまれるのか、AIが進化すれば意識をもつのか
まず人間の脳は電気信号をやり取りして情報処理を行っていると説明します。脳の神経回路をコンピューター上で再現したものが人工知能(AI)であり、大きな成果を挙げていることを述べています。
AIが進化してコンピューターが人間と同じような反応をするようになればそれは「意識」と呼べるのでしょうか。「意識」が物理学においても重要であることは理解できますが、現実に将来どうなるかについて恐ろしく思えます。。
物理学6:GPSが正しいのは、相対性理論が正しいから
「時間や空間は誰にとっても絶対的なものでなく、見る人や立つ位置によって相対的なもの」というアインシュタインの相対性理論を聞いたことがあるでしょうか。私は言葉としては知っていましたが、他人事のようにきいていました。本章でこれをGPS機能のしくみから解き明かしてくれます。ここでもキーワードは光であることがわかります。
グーグルマップは相対性理論なしでは確立できない技術のようです。アインシュタインのすごさに脱帽です。
物理学7:量子コンピューターが登場すれば、仮想通貨は使えなくなる
「量子」とはエネルギーの最小単位のことです。原子や素粒子の“粒”の性質と波の性質を併せ持った訳のわからない物体のことをいいます。これを素人でも理解できるようにかみくだいて説明しています。
量子コンピューターは従来のデータ基本単位”ビット”でなく「量子ビット」を使い計算処理を行っています。この方式で、複数のタスクを並行して計算することに長けたコンピューターが生まれると説きます。既に実用化されていて、たくさんの組み合わせから最善の組み合わせを探し出す目的地探索等に活用されているようです。
『世界の仕組みを物理学で知る』 Novelsman Comment <独り言>
今回私は量子コンピューターがどんなもので将来何を変えていくのかを知りたくてネット検索していた時にこの本と出会いました。実は量子コンピューターを扱う企業やそれを扱う商社の株価はすでに買われ始めています。私も投資しようかと思案しています。
いくらわかりやすい解説本を読んでも科学者や専門家のように理解できることはないと思います。ただ自分の興味あることが載っている書物を読むことは、資格取得の勉強と違って知る楽しみを感じることができるかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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