映画 OPPENHEIMER ネタバレ 感想

思うがままに

映画OPPENHEIMERを観ました。日本では原爆の父、原爆を造った人として有名な科学者オッペンハイマー。彼の人生の浮き沈みを描いた作品でした。ネタバレしています。ご留意ください。

あらすじ

J・ロバート・オッペンハイマーは頭脳明晰な物理学者です。ハーバード大学卒業後イギリスやドイツで著名な物理学者のもとで量子力学の研究に励んでいました。米国に戻ってからは教授として教鞭を執っています。

第二次世界大戦が勃発、米国政府は原子爆弾を製造するマンハッタン計画を推進します。オッペンハイマーは開発の施設ロスアラモス国立研究所の所長となって核爆発試験を成功に導きます。

原爆は元々ユダヤ人を排除するナチス・ドイツに対抗するために使用される予定でした。しかしドイツが降伏し、実際は広島と長崎に投下されて日本は無条件降伏しました。オッペンハイマーは甚大な犠牲者が出ていることから、原爆の炎と死んでいく人々の幻覚に悩まされるようになります。

戦後オッペンハイマーは米国原子力委員会(AEC)の顧問に就任します。AEC委員長のストローズは水爆開発に慎重な態度を取っているオッペンハイマーに好意的ではありません。またオッペンハイマーはトルーマン大統領とも面会して核兵器の国際的な管理機関を設けるべきだと提言しましたが、大統領が受け入れることはありませんでした。

大戦の約10年後、オッペンハイマーはソ連のスパイ容疑でAECの聴聞会に招集されます。表向きは家族や友人が共産党員であったことから疑いをかけられての聴聞でしたが、実は政治家ストローズが裏で糸を引いていました。オッペンハイマーは公職を追放されて晩年を閑職に甘んじて過ごします。

オッペンハイマーに対する聴聞会の数年後ストローズが商務長官就任の公聴会に招集されます。この場でマンハッタン計画に関わった物理学者ヒルは、ストローズがオッペンハイマーを追放する謀略を暴露する発言を行います。ストローズは商務長官就任を却下されてしまいます。

映画のラストは1947年に池のほとりでオッペンハイマーがアインシュタインに話しかける場面です。アインシュタインは言いました。 “大量破壊兵器を作ったConsequence(結果)を受けるるべきだ“ と

内容を自分なりに整理してみました

作品は3部構成になっています。第一部・第二部はカラーの映像で、第三部はモノクロ映像で映し出されます。第二部と第三部は同時進行で、カラーとモノクロの映像が交互に映し出されます。事前の予備知識なく観ていた私には、カラー映像のオッペンハイマーの聴聞会とモノクロ映像のストローズ公聴会のどちらのできごとが先か後か混乱しながら観ていました。ちゃんと観ていればはっきりしていることですが。

第一部は原爆が完成するまでを追っています。優秀な学生、けれども不器用なところがあるオッペンハイマーの人間らしさを存分に感じました。二人の女性を愛して生きているオッペンハイマーが印象に残っています。天才と呼ばれている男も私たちと同じ人間だ、と少し身近に感じながら観ていました。

第二部はオッペンハイマーがスパイ容疑で聴聞会に招集されて決定を下されるまでを克明に描きます。マンハッタン計画責任者の陸軍将校も、原爆開発初期メンバーで後に水爆の父と呼ばれるテラーの発言も、オッペンハイマーの無実をはっきりと証明することはありません。どの証言も私には保身の発言のように感じました。唯一はっきり無実を証言したのは妻でした。夫が不倫している事実を知らされても、ストローズの圧力に負けることなく夫の無実を断言します。単調になりがちな尋問の場面で映像に惹きつける演出はさすがアカデミー賞受賞作品です。狭い部屋で不利な立場に追い立てられていくオッペンハイマーの苦悩が克明に伝わってきました。

第三部はストローズが主人公です。政治家ストローズが商務長官就任に向けた公聴会の証言がモノクロで進行していきます。物理学者ヒルが飄々とした表情でストローズの策略を暴露しています。ヒル役は別映画でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックでした。親しみを感じながらも迫力に物足りなさを感じたのも本音です。

原爆の父 オッペンハイマー

話題を変えます。映画オッペンハイマーには、原爆の悲惨さと、人命の尊さに焦点を当てたやりとりや映像が限られています。トルーマン大統領や登場人物がヒロシマ、ナガサキと口にしたり被害状況を発言したりしているだけです。私たち観客に悲惨さを訴える場面がないまま映画が終わったことがとても意外でした。

もっともこの映画はオッペンハイマー氏が主人公です。彼自身が悲惨な状況を現場体験しているわけではありません。日本人は小さい時からの教育や報道を通して原爆の怖さが身体に染み付いていると思います。アメリカ映画に “No More Hiroshima” を求めるのは、原爆を題材にした映画であっても「ないものねだり」ということでしょうか。

そうだとしても核爆弾が爆発すると、戦闘に参加している兵士や軍施設だけでなく、大勢の一般市民を巻き込みます。原爆記念館に展示している縞模様に焼けた人の写真を世界の人はどのように感じるのでしょうか。私個人としては、せめて原爆の恐ろしさを示す映像があればインパクトを感じる人がたくさんいるのではないか、と思いました。

オッペンハイマーとアインシュタイン

映画のラストシーン。池のほとりでアインシュタインはオッペンハイマーにつ罰を受けなさい、と言い放ちます。あらすじで触れたように、アインシュタインはConsequence(結果)を受けなさい、と言っています。私はこれを罰と理解しました。にもかかわらず、オッペンハイマーは開発が成功したと言ってアインシュタインを無愛想にしてしまいます。

オッペンハイマーはアメリカ視点で核爆弾開発を成功させたと言ったことは正しいかもしれません。しかしアインシュタインの言おうとしているのは国家を越えた、世界の視点と思います。大量殺戮兵器など開発する必要がない、と。

私の理解が正しいかどうかの自信はありません。また映画をご覧になった方の感想に異を唱える意図はありません。平和な日本を愛する一人の日本人の映画感想でした。

お付き合いいただきありがとうございました

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